月別アーカイブ: 2013年1月

TPP

2012年は湘南も中等部も時事問題はTPPでした。。

昨年も選挙の争点になりましたが、やはり国際的な視野で日本をとらえる、ということが重要な視点なので、出題されたのだろうと思います。

日本はもとより、自国だけで成り立っているわけではありませんので、世界との関係の中で、何を目指しているのか、ということを小学生なりにとらえてもらう、という視点は必要だと考えられたのでしょう。

振り返ってみると、やはり時事に世界地理が出てくるのも、そういう理由からなのかもしれません。 以下は2012年慶應中等部の問題。


次の文章を読んで、各間に答えなさい。

 国と国との間で貿易を行うとき、国内の産業を保護するために、輸入品に対して輸入国側がかける税のことを関税といいます。関税がどのくらいかけられるかによって、その商品をめぐる貿易が活発になったり停滞したりするので、当事国間でこれをどのような形にするかが、非常に重要な問題として話し合われることになります。一般に、税率の高い状態で行われる貿易を(あ)、税率をできるだけ引き下げあるいは完全に撤廃した状態で行われる貿易を(い)とし、います。
 日本では、1858年に江戸幕府とアメリカとの間で(A)条約が結ばれて以来、関税の税率を日本が独自に決めることのできない状態が長く続きました。この条約がようやく改正され、日本が(う)を完全に回復したのは、1911年のことでした。また1920~30年代には、各国が(あ)の度合いを深めていたことが、第二次世界大戦をひき起こした原因のひとつと考えられています。
 近年は、色々な国の間で、(い)を推進する動きが活発になっており、日本もこれまでに、多くの国とFTA=(え)やEPA=(お)を結んできました。さらに、政府は2011年にTPP=(か)交渉への参加を表明しましたが、これまで例外とされていたァ農作物への関税が認められなくなる可能性が高いことから、農業関係者を中心に参加に反対する人々も多数います。

問1(A)に当てはまる言葉を漢字6字で答えなさい。

問2(あ)~(か)に当てはまるものをそれぞれ選びなさい。

1 加工貿易   2 自由貿易 3 保護貿易   4 アジア太平洋経済協力
5 環太平洋パートナーシップ協定 6 経済連携協定 7 自由貿易協定
8 世界貿易機関   9 関税自主権

問3 下線部アについて、農作物への関税が認められなくなることは、日本の農業にどのような影響を与えると考えられていますか。20字以上50字以内で説明しなさい。


(解説)

1858年は日米修好通商条約。関税障壁が高く、なるべく自国の産業を保護しようというのが保護貿易です。保護貿易が強まれば、当然、自由な資本の移動が少なくなるので、たとえその製品が優秀であったとしても、自国の商品と価格的には同等かそれよりも高くしてしまいます。一方、その関税障壁を小さくすれば、自由貿易となり、良い、価格的にも安い製品が流通することになり、弱い商品は売れなくなっていきます。日本が不平等条約を解消して、関税自主権と取り戻したのは1911年。当時、列強各国は関税障壁を高くし、ブロックを形成していたので、保護貿易でした。しかし、近年は自由貿易にしようという機運が高まり、FTA=自由貿易協定やEPA=経済連携協定が結ばれるようになっています。
2011年日本はTPP=環太平洋パートナーシップ協定の協議に参加することを表明していましたが、自由貿易にする以上、自国の産業を守るという主張は通りにくくなり、これが民主党の分裂などにも影響を及ぼしているのです。

アルファベット3文字が何を表すかは比較的よく出題されることです。TPPはいろいろな略称がありますが、最初のTPが Trans-Pacific 次のPがPartnershipを表しています。

日本の農業製品は集約的農業で、コストがかかっているために、海外で大量に生産された農作物に比べれば質も良いが、価格も高いので関税をかけなくなると売れなくなる可能性がある、ということで、農業を生業とする団体からは反対が多いのです。

今後議論を重ねていかなければいけない問題ですが、比較的問題にしやすいテーマですので、しっかりと勉強しておきましょう。

(答え)
問1 日米修好通商

問2 あ 3 い 2 う 9 え 7 お 6 か 5

問3 安い海外の農作物が大量に輸入されると、国内産の農作物が売れず、日本農業が衰えるから。
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独立自尊と唯我独尊

あけましておめでとうございます。

本年も、またお話を続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

さて、慶應義塾の教育の根本をを一言で言えば、「独立自尊」ということになると思うのですが、意外に福澤先生がこのことばを口にされたことは多くありません。

明治31年、福澤先生は子息、福澤一太郎や弟子に新しい道徳から成る教訓集を作るよう命じました。「福翁自伝」の最後に「私の生涯の中に出来してみたいと思うところは、全国男女の気品を次第々々に高尚に導いて真実文明の名に恥ずかしくないようにすること」という一文がありますが、それを成し遂げるために命じた、ということでしょう。

これは修身要領として明治33年2月25日に時事新報に全29か条が発表されましたが、それを貫く基調となるべき項目を決めるときに出てきたのが「独立自尊」でした。

修身要領

さて、この「独立自尊」ということばで、私が良く思い出すのは「唯我独尊」ということばです。「天上天下唯我独尊」でお釈迦様が言ったことばとされていますが、「ただ私が一番尊い」というのでは、これは字義が変わってしまう。

ある仏教系の中学の校長先生と話をしたときに、この話にたまたまなって、「やはりこれは自分の価値を見い出すということにあると思いますね。」と説明されて、腹に落ちました。

「だから教育というのは、その子の価値を見つける手助けをするということが一番だと私は思うのです。学校というのはそういう場でなければならない。その子が自分の価値を感じて、これでいこうと伸びる手助けをする。教えることはできませんが、手助けならできるのではないかと思っているのです。」

学校がその子の価値を見つけることはできないが、機会を与えることはできる、というのはその通りだと思います。その結果として、自分が独立すること、自らの存在を意識してさらに努力を続けること、これは両方の言葉に共通して私が感じていることです。

結局、最終的には教育の場にどんな人間観があるか、ということがその学校の背骨であろうかと思います。大学受験の実績とか気になることはあるけれど、そういう背骨がしっかりしている学校であれば、それはそれで大変頼もしいと思うのです。

しかし、ブランドばかりを見ていると、ついそういう根本を見失いやすい部分があります。

子どもたちはいずれにしても今年の4月に中学生に巣立っていくわけで、家庭もまたそういう背骨をしっかり持って子どもたちを見守ってほしいと思います。

今年もよろしくお願いします。

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