小泉信三元塾長のことばです。
先日、昭和37年10月28日、慶應義塾体育会創立70周年での記念講演の資料をいただいて読んでみると、そこで先生はスポーツには3つの宝があると話されています。
第一は練習の体験
練習によって不可能を可能にするという体験、これをわれわれは体育会の生活によって得たと思います。 と話されている。
人類が不可能を可能にするためには、第一は発明発見がある。
「けれどもいま一つ不可能を可能にするものは何かといえば、練習であります。練習によってわれわれは不可能を可能にする。まあ早い話が水泳で、水泳を習わないものは水に落ちれば溺れて死ぬ、水泳を知っているものは浮かぶ。水に落ちればずぐに死ぬ動物と水に落ちても生きる動物とでは全然別種の生物だと言ってもいいくらいでありますが、練習によってわれわれはそれを成し遂げ得る。まだ子どもが水に落ちたのを見てそれを救うことができないか、あうりは水に飛び込んでそれを救い得るかということは、私は道徳的に見て非常な違いだと思いますけれども、この道徳的な非常な違いは練習によって得られる。
スポーツはこの体験をわれわれにあたえるのであります。理屈でも説教でもない、ただ練習によってわれわれは不可能のことを可能になし得る。」
もとより勉強もひとつの練習ですが、しかしスポーツや習い事を経験する時、ここで練習をしなければ実は一番大事なことをしていない、ということになります。
ピアノも先生のところにいったときだけ、ではうまくはならない。やはり普段から弾いて練習するから、自分ができるようになることを経験できるのです。
この「自分ができなかったことをできるようになる」という経験は子どもたちにとって非常に大切なものです。できなかったことができるようになる、ということは本人の自信にもつながるし、また積極的にもなります。
習いごとやスポーツを受験勉強のためにやめる家庭が多くなっていますが、こういう視点が抜けているのではないでしょうか。別にプロになる必要はないが、しかし、「不可能を可能にする」経験はぜひ積んでもらいたいものだと思います。
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